子宮内膜症
子宮内膜組織に似た組織が子宮周囲の臓器(卵巣、腹膜など)に発生する疾患です。
病変が月経とともに反応することで炎症や癒着を引き起こします。
卵巣の病変は月経毎に出血が繰り返され、時間が経過するとチョコレート色になることからチョコレート嚢胞ともいわれます。
閉経後は症状が改善しますが、大きい病変では閉経後稀にチョコレート嚢胞から癌が発生することがあります。
月経痛、腰痛、性行痛、排便痛、不妊など
治療方法
無症状であったり、軽度であれば治療せず定期的な診察(エコーや内診など)で経過観察を行います。
貧血や月経痛がひどければホルモン剤などを使用する薬物療法と手術などの外科的治療があります。
症状の程度や妊娠の希望などを考慮して決定します。
薬物療法
対症療法として鎮痛薬、漢方薬があります。
効果がない場合は下記の①~③の治療方法があります。
① 黄体ホルモン製剤
子宮内膜増殖を抑えることで病変を小さくして経血量の現状や月経痛を緩和します。半年以内は不正出血が見られることがあります。
内服薬と子宮内に器具を挿入するミレーナがあります。
子宮内膜が薄くなることで、経血量は減少し、痛みも緩和されます。
② 低容量ピル
女性ホルモンの分泌を抑え、排卵と子宮内膜増殖を抑制することで症状緩和につながります。
内服して数ヶ月は不正出血や吐き気、頭痛などの軽い副作用を発症することがあります。
重症な副作用として血栓症に注意が必要です。
(但し内服開始から3ヶ月以内に発症することが多く、頻度は1万人に4人前後です。)
*閃輝暗点(目の前がチカチカと星が舞うような)を伴う片頭痛の方は血栓症のリスクがあるため内服できません。
③ Gn-RHアナログ製剤
女性ホルモンの分泌を抑え、一時的に閉経状態にさせることで病巣を縮小させます。
最大6ヶ月連続使用できますが、更年期症状(ほてり、のぼせ、関節痛など)がひどければ投薬方法を変更または中止します。
薬の種類としては以下の3種類があります。
① 錠剤(毎日1錠内服)
② 点鼻薬
③ 皮下注射製剤(月に1回皮下注射)
お薬についてのまとめ
黄体ホルモン製剤 | 経口避妊薬(低用量ピル) 低用量EP配合薬 |
GnRHアゴニスト製剤 | 子宮内黄体ホルモン 放出システム (ミレーナ) |
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適応症 | 子宮内膜症 子宮腺筋症に伴う疼痛の改善 |
経口避妊薬:避妊 低用量EP配合薬:月経困難症 |
子宮内膜症 子宮筋腫など |
避妊・月経過多 月経困難症 |
剤型 | 錠剤 | 錠剤 | 注射薬 点鼻薬 |
子宮内システム (子宮内に装着) |
自覚症状の効果 | 月経痛 月経時以外の痛みに有効 |
月経痛に有効 | 月経痛 月経時以外の痛みに有効 |
月経痛に有効 |
注意すべき副作用 | 不正性器出血 (出血には個人差があり、一度に大量の出血がおこる場合があります) |
吐き気 頭痛 血栓(まれ) |
ほてり のぼせ 発汗 |
月経異常 不正性器出血 腹痛 |
投与期間 | 制限なし※ | 制限なし | 6ヶ月が上限 | 制限なし (装着後5年以内に除去・交換) |
※ディナゲスト錠を、1年を超えて服用する場合、定期的に臨床検査(血液検査、骨塩量検査等)を行うなどの注意が必要です。
子宮内膜症に対する手術療法
年齢や妊娠希望の有無などで決定します。
妊娠を望む場合
保存手術 | 病巣のみを切除します。 |
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妊娠を望まない場合
①卵巣機能温存術 | 卵巣の一部または全部を残し、子宮や卵管を摘出します。 |
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②根治手術 | 子宮、卵巣または卵管など全て摘出します。 |