子宮筋腫
子宮筋腫は子宮に筋肉のこぶのようになる良性腫瘍です。35歳以上の方では3人に1人は発症します。
種類として漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫があります。筋腫の位置、大きさにより症状は様々です。
月経がある年齢では放置しておくと徐々に増大します。
子宮筋腫が子宮内膜に接する面積が広いほど月経量が多くなります。
(子宮内膜は女性ホルモンの働きで約1ヶ月周期で厚くなったり、剥がれたりを繰り返しています。この内膜の剥がれたときに生じる出血が月経となります。)
閉経後は卵巣ホルモンの低下により一般的には縮小していきます。
貧血症状(立ちくらみ、めまい)、経血量の増加、不正出血(月経以外の出血)、月経痛、不妊など
治療方法
無症状であったり、軽度であれば治療せず定期的な診察(エコーや内診など)で経過観察を行います。
貧血や月経痛がひどければホルモン剤などを使用する薬物療法と手術などの外科的治療があります。
症状の程度や妊娠の希望などを考慮して決定します。
薬物療法
対症療法として鎮痛薬、漢方薬があります。
効果がない場合は下記の①~②の治療方法があります。
① 低容量ピル
女性ホルモンの分泌を抑え、排卵と子宮内膜増殖を抑制することで症状緩和につながります。
内服して数ヶ月は不正出血や吐き気、頭痛などの軽い副作用を発症することがあります。
重症な副作用として血栓症に注意が必要です。
(但し内服開始から3ヶ月以内に発症することが多く、頻度は1万人に4人前後です。)
*閃輝暗点(目の前がチカチカと星が舞うような)を伴う片頭痛の方は血栓症のリスクがあるため内服できません。
② Gn-RHアナログ製剤
女性ホルモンの分泌を抑え、一時的に閉経状態にさせることで病巣を縮小させます。
最大6ヶ月連続使用できますが、更年期症状(ほてり、のぼせ、関節痛など)がひどければ投薬方法を変更または中止します。
薬の種類としては以下の3種類があります。
① 錠剤(毎日1錠内服)
② 点鼻薬
③ 皮下注射製剤(月に1回皮下注射)
お薬についてのまとめ
黄体ホルモン製剤 | 経口避妊薬(低用量ピル) 低用量EP配合薬 |
GnRHアゴニスト製剤 | 子宮内黄体ホルモン 放出システム (ミレーナ) |
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適応症 | 子宮内膜症 子宮腺筋症に伴う疼痛の改善 |
経口避妊薬:避妊 低用量EP配合薬:月経困難症 |
子宮内膜症 子宮筋腫など |
避妊・月経過多 月経困難症 |
剤型 | 錠剤 | 錠剤 | 注射薬 点鼻薬 |
子宮内システム (子宮内に装着) |
自覚症状の効果 | 月経痛 月経時以外の痛みに有効 |
月経痛に有効 | 月経痛 月経時以外の痛みに有効 |
月経痛に有効 |
注意すべき副作用 | 不正性器出血 (出血には個人差があり、一度に大量の出血がおこる場合があります) |
吐き気 頭痛 血栓(まれ) |
ほてり のぼせ 発汗 |
月経異常 不正性器出血 腹痛 |
投与期間 | 制限なし※ | 制限なし | 6ヶ月が上限 | 制限なし (装着後5年以内に除去・交換) |
※ディナゲスト錠を、1年を超えて服用する場合、定期的に臨床検査(血液検査、骨塩量検査等)を行うなどの注意が必要です。
子宮筋腫に対する手術療法
年齢や妊娠希望の有無などで決定します。
妊娠を望む場合
①子宮筋腫核出術 |
子宮を残して筋腫核(筋腫のこぶ)だけを取り除く手術です。
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※子宮鏡下手術 |
3cm以下の粘膜下筋腫は子宮鏡下手術が適応になります。
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②子宮動脈塞栓術 | 筋腫の栄養血管の血流を止めて、筋腫を縮小させる方法が適応になります。 |
妊娠を望まない場合
①子宮内膜焼灼術 | 子宮内膜を焼く装置を膣から子宮内膜に挿入し、マイクロ波の熱で直接焼灼して内膜を薄くすることで経血量を減少させる治療が適応になります。 |
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②子宮全摘出術 |
子宮を全て摘出します。
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※子宮を摘出であれば生理がなくなりますが、そのためすぐに更年期になるということではありません。
(卵巣を同時摘出でなければ手術=更年期になるということではありません)